Haruka Okubo

今回私は、「時を綴る」をテーマにした綴織のタペストリーを制作しました。

毎日同じ時間・同じ場所でも同じ瞬間は存在しません。日々変化していくその瞬間の光や影、印象を抽出し、時の経過を可視化することを目的としています。

この写真は同じ場所で朝4時にとった写真です。しかし、時期が異なるだけでこんなに違って見えます。太陽が昇る前の時もあれば、すっかり日が昇っている時もあります。時期やその日の天候によっても様々な変化があります。

部屋に差し込む光も日々変化します。カーテン越しに様々な表情を壁に映し出してくれます。1日とて同じ光は存在しなく光の変化は時が刻々と進んでいるのを象徴しているように感じます。
そんな光や影を時の象徴として一枚の布に綴っていきました。

まずドローイングを行いました。一枚の紙に毎日上からその日の光や影、印象を抽出したドローイングを重ねていきました。どんどん上に重ねていくことで、時間と色が積み重なっていき、時の経過を可視化していきました。

完成したドローイングがこちらです。朝4時に私が感じる印象を積み重ねっていった結果です。これをもとにタペストリーを制作しました。

制作方法としては木枠に経糸をはり、そこに緯糸を一本一本織り込み重ねていく技法です。糸の動きに自由度が高く絵を描くように織るコトができます。今回はこの技法を使い制作していきました

実際に追っている写真がこちらです。横一列織るのにも約20種類の色を使い織っていきました。細かい部分だと1日に4cmしか進まないということもありました。

緯糸に使用した糸は主にウールと綿で所々麻やシルクといった違う質感の糸もあります。全部で約30種類の糸を使用しています。

30種類の糸の中から何種類も糸を組み合わせ、ドローイングとあう色を探し、色を作っていきます。作った糸はタペストリーボビンという経糸に糸を織り込んでいく道具にそれぞれ巻きつけていきます。

完成した作品がこちらです。サイズは48x47cmです。時の重なりを出すために平織の他にノッティングという技法を使用しています。

ノッティングを行うことで画面に凹凸感を作っていきました。また、平織の部分と糸の太さを変えることで密度を出し、触った時も質感の違いを楽しめるようにしました。
毛足の長さを部分的に変えているため、画面の中で高低差を出しています。

平織の部分は色がしっかり画面に見えてくるので細かい色使いを心がけました。
ノッティングと平織以外にもスッテッチという技法を使用しボコボコの部分も作りました。

ノッティングの部分は最後にハサミを入れることで毛足が混ざりあい切る前と後では印象が変わり、まとまった印象になります。切る部分と切らない部分を作り質感に差が生まれるようにしました。

裏側は表側と違い凹凸がないため糸の色がしっかり見えます。