Momoka Miyata

私たち人間は社会的な生き物で群れで行動しなければなりません。
そのため、自分の言いたいこと、やりたいことなどの感情を我慢し、常に消しながら生きていると思います。
そんなストレスを日々感じている世の中に自分だけの空間をどこにでも作れる自由を手に入れられる物をテキスタイルで制作したいと思いました 。

ゼミでモロッコのベルベル民族のラグを見てインスピレーションを得ました。

北アフリカの広い地域に古くから住んでいる民族で、ベルベル民族自身は、1人を指す場合はアマジク、そして複数を指す場合はイマジゲンと呼んでいます。イマジゲンとは「自由な人々」という意味を持ちます。
彼らは遊牧民のため、移動して生活しています。そのため、家具も全て移動することができます。

家具の中でラグは丸めて持ち運ぶことができどこにでも「自由に移動すること」が可能なインテリアだと思ったのでラグを制作しようと思いました。

この「ベニワレン」と呼ばれるラグは元々部族が織っていた民族的なもので部族や産地によって様々な種類があります。
アトラス山脈の生活には欠かせない大切なラグで、祝い事の贈り物や、遊牧生活の寝具として使われています。

柄には一つ一つ願いや、祈りが込められていて、この写真のダイヤ型の柄には「家を守る」という願いが込められているそうです。

生活スタイルの変化によって「ボシャルウィット」が生まれました。元々遊牧民でしたが、現在は徐々に定住生活へと変化していき、羊を飼う必要がなくなりウールのかわりに自分たちが着用していた服を裂いて織り始めたのが始まりです。

「ベニワレン」と「ボシャルウィット」の素敵なところは、物と人が同じ時間を過ごし、使っていくことで、糸が抜けて、下地が見えるようになり、色さえも無くなっていき生活が物からみえるところです。私はここを目指しています。

民族がラグで使用しているノッティングと裂織りの技法を使い制作しました。

裂織りの布をブリーチ剤で色を抜くことで、日々我慢して消していった願いや、思いを表現しています。
消しても残っている感情、我慢して消していった感情は織ることで蓄積していき大きくなっていきます。
表面上にはなかなか見えて来ないが、誰もが生きていくなかで日々していることだと私は思います。
使用していきボロボロになることで普段はなかなか見えないが、誰もが我慢し、消していっている感情を解放して自由になることができるのではないかと思いました。
このラグは生活する中で変化していく面白いラグです。

柄は、自由のイメージがある猫のしっぽをモチーフにデザインしました。
自由気ままで、いつもマイペースな猫たち。関心事以外は、ほとんど関与せず、あまりにもひょうひょうとしていて、そのクールな姿勢や、自由でのんびりとした雰囲気をうらやましく思ったことはありませんか?
私はとてもうらやましく思います。
猫のように、自由にマイペースに生きたい。という願いを込めこのデザインにしました。

ラグは丸めて持ち運ぶことができどこにでも自由に移動することが可能なインテリアなので1人1人が寝れるぐらいの大きさ100✖️150のサイズで制作しました。
丸めて持ち運び家以外の場所に出かけ、自然に囲まれながら、このラグの上にいる時だけは自分は自由なんだと、やりたいこと、言いたいことを我慢しなくていいのだと思って欲しいです。
また、使っていくことで、糸が抜けて、削れることで、物と人が同じ時間を過ごし、物から生活が見えていくなかで、流れていく時間を感じてもらえたら幸いです。