Rika Yamaguchi

食べたものが私達の血肉となるように、過去に培った経験や作品に対する考えが作品の血肉となる、というコンセプトで制作しました。

ヒトの血肉はタンパク質をもとに作られています。そして、タンパク質は主に、肉や魚、大豆製品、卵、乳製品に多く含まれています。また、血肉の色である赤色は、情熱、怒り、熱などのエネルギッシュなイメージを持つ色です。タンパク質を含む食べ物のなかで、赤色の印象が強いのが牛肉だと考え、モチーフとして選びました。

このことから、置くことで視覚からエネルギーを摂取できるものを作るものとして牛肉をモチーフとしたラグを制作することにしました。

私はこのサンプルを織るなかで、織物は経糸と緯糸、肉は血管や筋繊維などの繊維状のものが集まって一つのものになっていることに気付きました。

このような共通点はありますが、肉と織物は全く異なるものです。そのため、肉をどのように織物へ変換できるかが課題でした。この課題に対し、肉らしい色を使い、肉の特徴を組織に反映させて織れば良いのではないかと思い、挑戦しました。                               

ここは、ネックと脛の部位を参考にしました。両方とも硬くて筋っぽいので、太目の糸を使うことで硬そうな感じが出るようにしました。

ここは、リブロースの部位を参考にしました。霜降りになりやすい部位なので、肉の赤色に脂肪の白色が細かく散っている様子を意識しました。赤身の部分の緯糸はただ赤色の糸を使うのではなく、他にピンクと白の糸をランダムに繋げて織ることで細かい脂肪の部分を表現するようにしました。

ここは、肩の部位を参考にしました。脂肪分が少なく、ややかたい赤身肉なため、やわらかい感じが出ないよう細い糸で密度高めで織りました。また、この部位は筋肉が集まっている部位でもあるので、筋肉らしさが出るようにしました。

ここは、ランプと内もも、サーロインの部位を参考にしました。ランプと内ももは赤身肉なため、一面真っ赤にしました。また、これらの部位はローストビーフなどの大きな切り身で使う料理に調理されることが多いです。そのため、ボアのように加工して肉のずっしりとしたかたまり感が出るようにしました。

ここは、外ももと脛の部位を参考にしました。これらの部位はそれぞれ筋肉質、筋っぽいという特徴を持っているので、ハリのある糸を使い、肉感よりも筋繊維感を強く意識して織りました。

ここは、バラの部位を参考にしました。赤身と脂肪が層になっているという特徴をデザインに反映させました。この部位は最も脂質が含まれている分、味が濃厚です。そのため、脂肪の部分も白ではなく赤色の糸を使うことで濃厚さを出しました。また、きめが粗いという特徴を、ネックと脛の部位と同様に太目の糸を使うことによって表現しました。

今回の肉を織物に変換した経験は私の血肉となってくれるはずです。私は、現在卒業研究・卒業制作でも同じコンセプトで取り組んでいます。今回のものと作品の形や織り方は違いますが、赤身の肉に細かく散る脂肪の表現や筋っぽい部位の表現の仕方など活かしたいと思います。